羽蝶蘭(ウチョウラン)は、かつては1本数百万円で売買されることもありましたが、無菌培養の普及に伴い、誰にでも楽しめる身近な花になりました。同時に、山野草の面影を失いつつあるのも事実で、かつての自生地にはふさわしくない姿になってしまいました。
自然界には存在しなかった仁王タイプ(中裂片が大きく発達した形状の花)の紅一点を、私が初めて作出したのが1994年でした。翌年には一部の業者さんの棚でも開花するようになり、現在では仁王タイプが普通の花形になってしまいました。
当時は、マニア向けの園芸誌に写真を送ればいくらでも掲載されたものですが、それ以降、広告主の花以外は、ごく一般的なものしか掲載されなくなったため、雑誌の情報は極めて偏ったものとなってしまいました。現在では、マニア向けの園芸誌は書店ではほとんど販売されていないため、私は長いこと全く見ることもなく、インターネットがほとんど唯一の情報源になっています。
私が雑誌で一番見たいのは広告なので、業者さんにはぜひ、NHKのテキストのようにどこの書店でも販売されている雑誌に広告を出してもらいたいものです。
最近は仕事が忙しく、羽蝶蘭はほとんど作っていないのですが、羽蝶蘭もまだ改良の余地が多く残されているので、時間が許せばもう少し本格的に取り組みたいものです。
現在でも高価な羽蝶蘭はありますが、培養も容易で、岩千鳥などより種も圧倒的に数多く取れ、フラスコの中では、成長の速いものは発芽してから2カ月ほどで開花球になるため、今後は一つの園芸植物として、広く一般に普及してゆくことでしょう。
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